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目次
第2章 電話対応
1.電話応対の基本のポイント
◆元気な第一声で、好印象からスタートしよう
電話でコミュニケーションをとる機会が減っていることもあり、新人に限らず電話応対に苦手意識を持っている社会人は少なくありません。
・マニュアルがあってないような業務だから ・相手の依頼事に対応していく柔軟な力が必要だから ・顔が見えないため、声だけが頼りだから |
このように様々な不安材料があるためですが、まずは元気にハキハキとした第一声でスタートしましょう。
「おはようございます、株式会社○○でございます」 「はい、○○株式会社、担当○○でございます」 |
慣れもありますので、恐れる必要はありません。積極的に電話に出ることで、業務知識も対応力も備わります。
いつもやる気のなさそうな声で電話に出れば、それがその人の習慣になるだけでなく、仕事の進め方や組織のイメージにも影響してしまいかねません。
ビジネスの場では、電話は重要なコミュニケーションツールであり、一本の電話が利益につながる大切な役割を担っていること、一人の行動が会社全体のイメージにつながってしまうこともぜひ意識してほしいと思います。明るい電話応対は、相手の気持ちも明るくします。
◆正確なコミュニケーションがミスを防ぐ
ズレや間違いが起こらないよう、正しく伝え、しっかり「聴く」ことがポイントです。そのためには、①メモをとる、②重要なポイントは復唱する、などの基本的な対応をしっかりとります。
あわてていると確認することを忘れてしまいがちですが、相手の会社、名前、日時、数量などは必ず復唱するように習慣づけておきましょう。
所属と名前を確認 ・○○会社○○様ですね。いつもお世話になっております (お電話ありがとうございます) |
商品と注文数を確認 ・ご注文はPX5、○月○日、○時までに横浜倉庫に100個でお間違えないでしょうか |
別の言い方に変えて確認する ・1時ですね→13時ですね ・7(しち)月→7(なな)月 ・デンマークのⅮですね |
◆一段高い自分を演出する
満足度の高い電話応対には、①こころ、②スキル、③仕事の知識、④切り返し力が必要だと言われています。
①の「こころ」には、相手の役に立ちたい、組織の一員として貢献したいという二つが含まれます。態度や気持ちは不思議と声に出るものです。
②の「スキル」は、声の出し方やペーシング(話の速度や声の大きさなどを相手に合わせること)、リズム、言葉遣いなどです。相手に合わせた対応が必要です。
③の「仕事の知識」は、依頼事や尋ね事に適切に対応できる力です。
「わかる者と代わります……」ばかりでは、仕事がつまらなくなってしまいます。
④の「切り返し力」は、高度な対応力です。②や③に入れる場合もありますが、「誰に回すべきか」「いったん切ってかけ直そう」などの状況を瞬時に判断できる力です。
どれもとても大切な力です。さらに、日ごろの自分を一段高く演出してみせる電話応対は、自身の成長にもつながります。姿勢を正し、しっかりとした接遇用語で明るく応対すれば、電話での気持ちのよいコミュニケーションが成立します。
電話応対の心得
正確 | ・明瞭にはっきり話す |
---|---|
・あいまいな言葉は使わない | |
・メモをとり、ポイントを復唱する | |
迅速 | ・待たせない |
・長くかかる場合はいったん切る | |
・たらい回しはしない | |
簡潔 | ・コストがかかっていることを意識する |
・5W3Hを意諏してわかりやすく伝える | |
丁寧 | ・言葉遣いやペーシングに配慮する |
・明るく、相手の立場に立った応対を行う | |
・適度にあいづちを打つ | |
注意点 | ・ビジネスでは「もしもし」は使わない |
2.電話のかけ方
◆電話をかける
新人にとって、「電話をかける」ということはとても緊張する仕事です。緊張や不安を和らげるコツは、やはり準備です。最初のうちは話す順序や内容などを書いた「台本」を作って、伝え忘れなどがないようにするのもよいでしょう。
必要な資料を手元に置いて話を進めれば、時間のロスも防ぐことができます。また、朝一番や月末などは、どの組織も忙しいときなので気遣いしたいものです。
急を要しない案件は、タイミングを考えて電話をかけることも相手への配慮です。
電話をかけるときの心構え
せ(背) ……背筋を伸ばして話す(声が通る) め(目) ……別の仕事を目で追わない(電話に集中する) て(手) ……手にペンを持つ(メモを取る) あし(足)……両足をしっかり床に置く ふく(服)……服装も整える くせ(癖)……言葉のくせやひげ(あの~、え~など)に注意 |
電話をかける際の準備・心構えも、人と対話をするときのポイントと同じです。さらに、「目」は取り次ぐ相手に向けることもあります。
◆あいさつとクッション言葉が会話の流れをよくする
電話をかけるのが苦手な場合は、あいさつから始めるとスムーズです。さらに「恐れ入りますが」などのクッション言葉を入れることで丁寧さが増します。
例: 「おはようございます。私、○○会社、○○と申します。△△様はいらっしゃいますでしょうか」 「お世話になっております。○○会社の○○と申します。恐れ入りますが(お忙しいところ恐縮ですが)、△△様をお願いできますでしょうか」 |
慣れてくれば、「私、○○会社の○○と申します。いつもお世話になっております……」と名乗ったあとにあいさつをするという流れも自然にできるようになりますので安心してください。
◆相手が不在時の対応
電話をかけた相手が不在のことも多いですね。その場合は、あらためてかけ直すのが基本です。
もちろんケースバイケースですので、伝言をお願いすることもあります。いろいろな言い回しを覚えて使いましょう。
例: 「こちらからあらためてご連絡いたしますが、お戻りは何時ごろになりますでしょうか……」 「いつごろならご都合がよろしいでしょうか……」 「お手数ですが、○○の件で、伝言をお願いできますでしょうか」 「それではお戻りになりましたら、○○会社の○○までご連絡をいただけますでしょうか。電話番号を申し上げます……」 |
電話のかけ方の流れ
準備 | ・話す内容をまとめておく |
---|---|
・メモや関係する資料を準備する | |
・相手の名前や役職を確認する(名刺など) | |
・番号を間違えずにかける | |
あいさつ | ・会社名+名前を名乗る |
・日ごろのお礼を伝える 例: 「いつもお世話になっております」 |
|
取次依頼 | ・相手の在否を確認する |
・取り次ぎを依頼する 例: 「恐れ入りますが、○○様はいらっしゃいますでしょうか」 「~~の件でご連絡いたしました」 |
|
用件 | ・(相手が出たら)あらためて名乗る+日ごろのお礼 |
・簡潔に伝える+大事なポイントは繰り返す | |
あいさつ | ・お礼の言葉 例: 「お忙しい中、ありがとうございました。それではよろしくお願いいたします」 「○○様にもよろしくお伝えくださいませ。失礼いたします」 「ご丁寧にありがとうございました。大変助かりました」 |
≪プラスアルファの言葉を織り込む≫
・先日はご来社いただき、ありがとうございました ・ご連絡が遅くなり、申し訳ございません ・ただ今、お時間よろしいでしょうか ・少し長くなりますが、よろしいでしょうか |
※最初の名乗りを含めたあいさつや最後のあいさつは組織のルールがあればそれに従う
(例)11時までは「おはようございます」と電話に出る
3.電話の受け方
◆電話を受ける
皆さんと同様に、緊張感や不安を抱いて電話をかけてくる相手ももちろんいます。
受け手は丁寧な言葉遣いや穏やかな話し方で対応し、相手に安心感を与えたいものです。
そのうえで、的確に①ほかの人につなぐ、②質問に答えるなど、対応スキルを磨いていきましょう。
電話の受け方の流れ
あいさつ | ・名乗る 例: 「はい、○○株式会社でございます」 ※3コール以上の場合は「お待たせいたしました……」 |
---|---|
相手確認 あいさつ | ・相手確認+日ごろのお礼 例:「○○会社の△△様ですね。こちらこそお世話になっております」 |
取り次ぎ | ・取次先を確認 例: 「営業1課の○○ですね。ただいま代わりますので少々お待ちくださいませ」 ※ 不在時は伝言や別の人に代わるかなどを確認 |
用件 | ・取次者に概要を伝える 例: 「○○です。○○会社の△△様から~の件でお電話が入っています」 |
◆メモの役割と基本の書き方
電話応対後、伝言メモを残すために何度も書き直している人も多いのではないでしょうか。
「丁寧なメモを残したい!」と考えるのは間違いではありません。ただ、時間のかけ過ぎは、本来やるべき仕事が後回しになってしまうリスクがあります。
メモは用件がわかるように簡潔に書くよう心がけ、必要があればメールに残したり、口頭でも伝えたりするようにします。
伝言メモの例
〈伝言メモ〉 渡辺部長 先ほど、○○株式会社の△△様からお電話がありました。 「納期の件で、戻り次第連絡をいただきたい」とのことです。 よろしくお願いいたします。 (連絡先)123-4567 (受)7/31 10:00 中村 |
メモ書きのポイント
・誰あてのメモか ・誰からの電話か(会社名、名前など) ・用件は何か ・折り返しが必要か(必要であれば電話番号) ・電話の受信日時 ・誰が受けたか(受信者) |
◆聞き上手は仕事上手
話がうまい人を「うらやましい」と感じたことがある人は少なくないと思います。
一方、聞き上手な人についてはどうでしょう。
普段、私たちは、「聞く」というコミュニケーションやその能力にはあまり意識を向けていないのではないでしょうか。
話を耳と心で理解しようと努める姿勢や人柄は、相手から好感を持たれます。
電話での聞き方のポイントは、次のとおりです。
- (1)あいづちはタイミングよく
- 電話ではうなずく姿が見えないため、適切なあいづちが必要です。
- 「はい」「ええ」「なるほど」が一般的ですが、「なるほど、なるほど……」と重ねたりすることや、「なるほどですね」は控えましょう。
- つい使いがちな、「なるほどですね」は「なるほど、そうだったのですね(そうなのですね)」と言い換えます。
- (2)相手の感情に共感を示す
- 相手の話すことを汲み取る聞き方です。「意見は同じではないけれど、あなたの言うことも理解できます。」という共感を示すスタンスは相手を安心させ、良好な関係の構築にも効果的です。
- (3)重要な言葉は確認する
- 重要な言葉は繰り返したり、言い換えたりして確認することで、ミスやトラブルを防ぐ役割があります。
- (4)適切なタイミングで要点をまとめ、疑問点を確認する
- 相手との共有ができているか、途中で要点をまとめて確認します。また、理解不足な点は質問で補うなどして対応しましょう。
- 知ったかぶりは要注意です。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざもあります。
4.ケース別の対応と携帯電話
◆様々な状況での電話応対
電話では、時には柔軟で機転の利いた対応が求められます。
新人のうちは、「わからないこと」や「自分では対応が難しいこと」は迅速に先輩や上司につなぐことが大切ですが、徐々に自分自身で対応できるケースを増やしましょう。
- (1)間違い電話
- 会社あてにかかってきた間違い電話は、忙しいときには雑な対応をしてしまいがちですが、応対次第で自社のイメージアップにつながるかもしれません。
- 誰でも間違いはあります。迷惑そうに応対すれば、お互い気持ちがいいはずはありません。
例:「こちらは○○でございますが、どちらにおかけでしょうか」 |
- (2)声が聞き取りにくい
- ぼそぼそ話す小さい声や、携帯電話からかかってきたとぎれがちな声は聞き取りにくいですね。
- 内容がよく聞き取れないまま電話を終えてしまうと、ミスにつながりますので要注意です。
- ポイントは、「相手のせいにしない」対応です。
例: 「お電話が遠いようですが……」 「お話の途中で申し訳ありませんが、こちらの声は聞こえていらっしゃいますか」 「こちらからおかけ直しいたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」 ※最初にクッション言葉を入れましょう |
- (3)クレーム(苦情やご意見)電話
- まずは「相手の話をしっかり聞く」という初期対応を意識します。相手の感情をクールダウンさせる効果があり、二次クレームに発展させない方法でもあります。
- クレーム内容が複雑な場合は担当者に電話を回しますが、
- ①たらい回しは避ける、
- ②つないだ先で何度も同じ話をさせない(つなぐ人は概要を手短に伝える)
- などの配慮が求められます。
- こちらの不備やシステム上のトラブルも考えられます。お客様の立場になって対応しましょう。
例: 「このたびは大変申し訳ございませんでした。お忙しい中、ご連絡いただきましてありがとうございました」 「ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。今後はこのようなことのないようしっかり対応してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」 |
- (4)電話での道案内
- 電話で自社までの道案内をする場合は、まず現在地や、そこから見える景色を確認しましょう。
例: 「どちらに(どこから)いらっしゃいますでしょうか」 「何か周辺に見えますでしょうか」 |
- (5)勧誘などの迷惑電話
- 会社には様々な商品の営業や、不動産等の勧誘電話も舞い込んできます。
- 最近は友人を装い取り次ぎを依頼するケースなど、どんどん巧妙になっています。
- 基本は、①用件を確認する、②組織のルールに沿って対応することです。
例: 「恐れ入りますが、ご用件をお聞かせいただけますでしょうか」 「大変申し訳ございません。業務以外のお電話はお取り次ぎができない規則になっております」 |
- (6)担当者が不明
- お客様からの電話を誰に回してよいか迷うケースもあります。その場合は、連絡先を確認し、社内で確認後、すぐに折り返すようにするとよいでしょう。
例: 「すぐに確認し、折り返し担当の者(わかる者)からご連絡いたします。大変申し訳ございませんが、しばらくお待ちいただけますでしょうか」 |
◆社内電話のマナー
社外電話は丁寧なコミュニケーションを心がけていても、社内電話はいかがでしょう。雑に扱っていませんか。
返事も適当で、「○○さんですか?」とかけた側が確認しないと聞き取れないこともあります。社内の人も大切な「顧客」です。感じのよい受け応えはどんな電話でも同じです。
◆携帯電話のマナー
最近は主要なビジネスツールとして、携帯電話で仕事をするビジネスパーソンも増えています。
とても便利な反面、使い方のマナーは世代や人によって感じ方が異なりますので、かけるタイミングや場所などにも注意が必要です。
固定電話と同様に、携帯電話でのやり取りの際も、①メモをとる、②大事なポイントは復唱すると安心です。
≪相手にかける場合≫ ・○○様の携帯電話でしょうか(相手確認) ・私は○○会社の○○と申します(名乗る) ・ただいま、お時間よろしいでしょうか(時間確認) ≪折り返す場合≫ ・先ほどは電話に出ることができず、失礼いたしました |