文書の過去の版を表示しています。
第3章 メールとビジネス文書
1.電子メールの基本ルール
◆ワークスタイルの変化 驚くほどの速さで、電子メール(以下メール)は生活になくてはならないコミュニケーションツールとなりました。昨今は手軽な分、何でもメールで送ってしまう風潮がありますが、ビジネスシーンにおいては、メリット・デメリットを理解しての使い分けが必要です。また、メールのマナーは発展途上だと言われています。 基本的なマナーをしっかり守りつつ、上手に利用して仕事を効率よく進めたいものです。 相手を間違えて送信ボタンを押してしまったり、ファイルの添付を忘れてしまったりは多くの人が経験している失敗です。 ついルーティンになりがちですが、大きなトラブルになる前にしっかり確認を行い、受け取る側の気持ちになって文章を読み返してから送信しましょう。
メールのメリット・デメリット メリット o送受信に時間や場所の拘束が少ない o複数の人に一斉配信が可能 o過去のやり取りを書類やメモにして保管する場所が不要 o検索機能が使える o電話より緊張感が少ない デメリット o誤送信のリスクがある o簡易な文章のため、誤解が生じやすい o転送や二次利用が可能で、機密性がない o電話と異なり、相手が読んでいるかが不明 o一方通行になりがち
◆メールのレイアウト メールは紙文書より扱いが簡易な分、それほど細かいルールがあるわけではありませんが、特徴に適したレイアウトは存在します。注意点は次のとおりです。
① あて名(相手の名前)は最初に、送信者(自分の名前)は最後に書く ② 1行全部を埋めず、適宜改行して読みやすくする ③ 話が変わる箇所で行間を空ける ④ 行頭は揃え、文字の1字下げなどは不要(相手の機種によっては文字のズレが生じるため) ⑤ 半角カタカナやコピーした文書は文字化けしやすいので、注意する ⑥ 署名はすっきりしたものが好まれる
【あて先・件名のポイント】 oCC=Carbon copyの略。情報共有や参考にしてほしい相手に送る際に使い、全員にアドレスが表示される。差出人だけに返信するつもりが「全員返信」でCCの相手にも届いてしまうなどのミスが起こることもあるので注意が必要 oBCC=Blind carbon copyの略。ほかの受信者にはアドレスが表示されない。互いに面識がない人に一斉送信する際などに使う o件名:メール内容が件名でわかるように作成する
2.ビジネスメールのマナー
◆ビジネスメールのポイント
(1)内容がわかる件名を入れる(15文字程度) 多くのメールが入ってくる場合、件名から優先度を判断する人もいます。重要なメールや再送などは、それがわかるように件名に盛り込むのも気遣いです。
例: 【重要】明日のご訪問日程変更のご依頼(田中) 【再送】○○契約書の修正について((株)△△長井)
(2)「!」や「?」マークの多用はNG 「!」マークや「?」マークは文章がカジュアルになってしまい、違和感を覚える人もいます。 ビジネスメールでの多用は控えたほうがよいでしょう。
(3)絵文字や顔文字は使わない プライベートのメールなら、「しっかりしてください(^^)」のように笑顔の顔文字を入れることで「そんなに怒っていなさそうだ」と相手を安心させる効果がありますが、残念ながらビジネスでの顔文字の使用はNGです。 複雑なやり取りやお詫びなどは、相手に伝わる丁寧な表現を心がけ、メールを送ったあとは電話でフォローするなどしてトラブルにつながらないようにしましょう。
◆電子メールならではの定型表現 ビジネスメールには定型表現があります。これを上手に使い、次ページの図表のような言い回しを入れれば、簡易なメールでも心遣いが伝わります。 「気遣い」や「まとめ」の文言は、紙文書でもよく使われるものです。また「拝啓--敬具」の頭語や結語、「○○の候、貴社ますます……」のような時候のあいさつは基本的に省きます。
◆様々な機能の使い方
≪開封通知≫ 開封通知は、送ったメールを相手が開いたかどうかがわかる機能ですが、あまり評判はよくありません。重要な場合は電話で確認したり、「ご確認いただきましたら、お手数ですがご返信いただけますと助かります」などの一文を添えたりすることでカバーできます。
≪パスワード機能≫ メールは郵便と同じです。セキュリティ上、個人情報など重要な添付ファイルには、パスワードをつけて送るとよいでしょう。 パスワードは、「別メールにてお知らせいたします」、「続いてパスワードをお送りいたしますので、ご確認ください」などとメールを分けて伝えます。
≪一般的なメールの流れ≫
社内 社外
あいさつ お疲れ様です お世話になっております はじめてご連絡いたします 名乗る 経理課の○○です ○○会社、〇課の○○です 内容 さっそくですが… ついては… 今回の○○ですが… さっそくで(はございま)すが… つきましては… このたびのご依頼の件ですが… まとめ よろしくお願いします 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします
≪一目置かれる言い回し≫
言い回し
久しぶり ご無沙汰しております。○○の際にはお世話に… 長文 (最初)長くなりますので、お手すきの際にでも (最後)長文失礼いたしました 再送付 たびたび申し訳ありません 何度もお手数おかけいたします 急ぎ (最初)取り急ぎ、お伝えいたします (最後)取り急ぎ、ご連絡いたしました 急ぎではない お時間があるときにでもお目通し… ご興味があればぜひ… 気遣い 猛暑の折、どうぞご自愛くださいませ 季節の変わり目、お身体にご留意のうえお過ごしくださいませ まとめ またお目にかかりたく… このたびはありがとうございました 引き続き、どうぞよろしくお願いいたします
3.ビジネス社内文書
◆読みやすいレイアウトを心がける 最近では、報告書、議事録、稟議書などはフォーマットに記入し、メール添付で送ることが多くなっています。「お知らせ」のための通達文書についても、過去のデータを見本に作成すればよいのですが、レイアウトがきれいだと、読みやすい、理解しやすいといった相手の視点に立った場合のプラスアルファがあります。 社内向けのビジネス文書に必要な項目とレイアウトのポイントは、次のとおりです。
① 文書番号 → 文書の連番 ② 発信日付 → 西暦・元号から書く ③ 受信者名 → あて先(役職名のみでもOK) ※2名以上(複数)に送る場合のあて先は「各位」を使う ④ 発信者名 → 発信者(役職名のみでもOK) ⑤ 件名 → わかりやすいタイトルを心がける ⑥ 本文 → 1字下げて始め、「です・ます調」で簡潔に ⑦ 記+記書き→ 大切な項目は記書きや箇条書きにする ⑧ 以上 → 締めくくりの言葉として入れる ⑨ 担当者名 → 必要であれば記す
社内文書の基本レイアウト ①文書番号 ②発信日付 ③受信者名 ④発信者名 ⑤件名 ⑥本文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
⑦記 1. 2. ⑧以上 ⑨担当○○
◆社内文書作成のポイント 社内文書はシンプルに作成するのがコツです。多くの情報を盛り込まず、敬語も最小限で作成します。さらに、あいさつ表現も必要ありませんので、書き出しは1字下げて、 「下記のとおり健康診断を実施します……」 「このたび、防災訓練を行うことになりました……」 などのように、本文から始めます。
社内文書の例 総発201×××0038 20××年×月×日 従業員各位 総務部長 マナー研修のお知らせ
下記のとおり、ビジネスマナー研修を実施します。参加希望者は〇月〇日までに総務課まで連絡ください。 よろしくお願いします。 記 1. 日時 ○月○日(水)13:00~17:00 2. 場所 ○○研修センター 3. 講師 ○○講師
以上 担当○○
報告書の例 20××年×月×日 営業部長 ○○○○(受講者名) ビジネスマナー研修報告書
下記のとおり、ビジネスマナー研修を受講いたしましたのでご報告いたします。
記
1. 研修日時 〇月〇日(水)13:00~17:00 2. 研修場所 ○○研修センター(港区) 3. 参加者数 24名 4. 研修内容 1)マナーとは何か、マナーの5原則と印象形成 2)電話対応とメールのマナー 3)ビジネス文書の書き方 4)ホスピタリティと感情のコントロール 5. 感想 今回は、現場をイメージしながら参加したため、・・・・・・・・・
以上
4.ビジネス社外文書
◆社外文書は礼儀を重んじる 社外文書には、社外へ送る業務文書と、社長就任や社屋移転などを知らせる社交文書の二通りが存在します。メールに添付して送る業務文書であっても、あいさつ文や丁寧な表現が求められます。 さらに、行頭には自分や組織を表す名前や言葉、行末には相手や組織を表す名前や言葉がこないように配慮しましょう。
社外文書に必要な項目とレイアウトのポイントは、次のとおりです。 ① 文書番号 → 文書の連番 ② 発信日付 → 西暦・元号から書く ③ 受信者名 → あて先(会社名、名前を略さない) ④ 発信者名 → 発信者(会社名、名前を略さない) ⑤ 件名 → 丁寧かつ内容が伝わるタイトルをつける ⑥ あいさつ → 頭語+時候のあいさつ ⑦ 本文 → 1字下げて始め、最後は結語を入れる ⑧ 記+記書き→ 大切な項目は記書きや箇条書きにする ⑨ 以上 → 締めくくりの言葉として入れる ⑩ 担当者名 → 必要であれば記す
社外文書(横書き)の基本レイアウト ①文書番号 ②発信日付 ③受信者名 ④発信者名 ⑤件名 ⑥頭語 前文(あいさつ文)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑦さて、・・・主文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (まずは)末文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・結語
⑧記 1. 2. 添付書類 ⑨以上 ⑩担当○○
◆社外文書作成のポイント 業務文書は、左記の例のように独特の言い回しや定型表現を使い、ムダのない文書作成を心がけます。一方、社交文書は、儀礼的な要素が強いものですが、人間関係を継続、また円滑にしていくために必要なものでもあります。年賀状なども社交文書の一つです。
社交文書を作成する際のポイントは次のとおりです。 o縦書きが一般的だが、最近では横書きも増加している o漏れのないよう、一斉に、タイミングよく送る o句読点をつけない文もある(よいことを止めないという説があり) o格式高い文面にする(「拝啓」より「謹啓」が多い) o日ごろの感謝と今後の支援を文面に入れる
業務文書の例 20××年×月×日 株式会社○○電光 営業部長 中野卓也様 △△工業株式会社 営業部長 久保正太 新製品「×××」展示会開催のご案内
拝啓 陽春の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、このたび弊社では新製品「×××」を開発、販売することになりました。 つきましては、下記のとおり展示会を開催いたしますので、ご多忙とは存じますが、ぜひご来場賜りたくお願いいたします。 まずは略儀ながら書中をもってご案内申し上げます。 敬具 記 1. 日時 4月25日(水) 10時~16時 2. 場所 △△テクノロジーセンター5階(会場地図同封) 以上 担当:戸田(電話××)
社交文書の例(縦書き) ※横書き文書と縦書き文書のレイアウトは異なります 謹啓 ○○の候、貴社ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます。 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、私儀、三月一日付をもちまして名古屋営業所勤務を命じられ、このほど無事着任いたしました。関東支店在任中はひとかたならぬご厚情を賜り、深く感謝申し上げます。 今後も新天地におきまして、営業の第一線として一層職務に邁進いたす所存でございます。なにとぞ今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。 まずは略儀ながら、書中をもちましてごあいさつ申し上げます。 敬白 〇年〇月〇日 株式会社○○ 山本 孝太郎
取引先各位
記
名古屋営業所 愛知県名古屋市西区・・・・・ 電話番号 〇五二(□□□)・・・・・・・
以上
5.社外文書の慣用表現
◆頭語と結語 頭語とは、手紙の冒頭に書く「こんにちは」などのあいさつに当たる言葉です。 結語も同様で、最後を締めくくる「さようなら」に当たる言葉で、頭語と結語は対応する組み合わせが存在します。
≪頭語≫ o拝啓 → 一礼をして申し上げます o謹啓 → 謹んで申し上げます o前略/冠省 → 前文を省略します o拝復 → 敬意をもってご返事申し上げます
≪結語≫ o敬具 → 敬意をもって申し上げました o謹白/敬白 → 謹んで申し上げました o草々 → 走り書きをいたしました o不一 → 十分に意を尽くせませんでした
≪頭語と結語≫
頭語 結語
一般文書 拝啓 敬具 あらたまった文書 謹啓 謹白、敬白 急ぎの文書 前略、冠省 早々、不一 返信文書 拝復 敬具
3月でしたら「拝啓早春の候、貴社ますます……」などと始めますが、季節感が合わない地域もあるため、「○○の候」を省いたり、「時下ますます……」などを時候のあいさつに置き換えたりするのも一般的です。 ※ 時下は「このごろ」「現在」などを意味します。
例: 拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます 拝啓 時下ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます
安否を尋ねる言葉 組織 団体 ご清栄 ご繁栄 ご隆盛 ご発展 個人 ご健勝 ご清祥
時候のあいさつ例 1月 初春、新春 初春とはいえ… 7月 猛暑、向暑 連日厳しい暑さが… 2月 厳寒、余寒 立春とは名ばかり… 8月 晩夏、残暑 残暑厳しき折から… 3月 早春、春暖 寒さも緩み… 9月 初秋、秋涼 爽やかな季節を迎え… 4月 陽春、晩春 春たけなわ… 10月 秋冷、錦秋 爽やかな秋晴れの… 5月 新緑、若葉 風薫るこのごろ… 11月 晩秋、深秋 秋も一段と深まり… 6月 麦秋、入梅 うっとうしい季節に… 12月 師走、向寒 年の瀬も押し迫って…
慣用表現 通常の言い回し 慣用表現 通常の言い回し 慣用表現 いつも特別の 平素は格別の 気にしないでほしい ご放念くださいますよう… ひいきをくれて こ愛顕を賜り/お引き立てをいただき 送っていただき ご恵贈賜り わたくしこと 私儀 ご案内のついでに ご案内かたがた 従業員全員 従業員一同 調べて受け取って ご査収くださいますよう… 深く感謝する 厚く御礼申し上げます つまらないものですが ご笑納くださいますよう… 以前から かねてより 多忙だと思いますが、調整して来てほしい 万障お繰り合わせのうえ、ご来臨賜りますよう… 本当に まことに 努力するつもりです 鋭意努力する所存でございます 会ってほしい ご引見賜りますよう… 簡単ですが 略儀ながら どうかお許し 何とぞご容赦 非常に幸せに思う 幸甚に存じます これまでにも増して 倍旧の/一層の お身体大切に ご自愛賜りますよう… 第3章「メールとビジネス文書」のチェックリスト
チェック項目 ✔ 参照ページ
メール 1 メールのメリットを考えて、電話や文書との使い分けをしている
2 送り先を誤らないよう、必ず最後にチェックすることを習慣化している 3 件名はメール内容の概要が分かるように作成している 4 CC・BCCや様々な機能の使い方を理解してメール内容に応じて適切に使用している 5 メールのレイアウトの特徴やNGポイントを認識し分かりやすい表現を心がけている
社内文書 6 社内文書のレイアウトやポイントを理解して作成している
7 あいさつなどの表現は省き「ですます調」のシンプルな文書を心がけている 8 多くの人や店舗に送る場合は「各位」の敬称を使うようにしている 9 大切な項目を「記書き」にするなど分かりやすく作成する方法を実行している
社外文書 10 社内文書と社外文書の作成の違いやポイントをしっかり理解している
11 社外文書には一般の業務文書と挨拶状などの社交文書があることを理解し使い分けができている 12 内容や季節によって、頭語・結語や時候の挨拶などを工夫している 13 社外文書特有の表現や言い回しを使って、分かりやすく時間をかけずに作成している 14 あらたまった文書には、慣用表現を上手に使って作成し、失礼のないよう注意している